ROCKな人魚姫《前編》
溜まり場「喫煙所」
「あのっ。入部したいんですけどっ」
次の日、迷わずあたしはバンドサークルの部室へと向かった。
見た目は怖そうなお兄さんが3人。
大丈夫。
バンドやってる人に悪い人はいない。
「じゃあ、ここに名前書いて。」
机に置いてあった紙を指差し、そう言った。
その紙に目をやると、すでに数人の名前が書かれており、1年生がもう何人か入部しているということが伺えた。
その名簿の一番下にあたしの名前を書く。
部室にいた先輩たちは何も言葉を発しない。
視線は、あたしの鉛筆の先に集中しているようで、自分の名前を書くだけなのに、とても緊張してしまい、みみずみたいな文字が出来上がった。
それを見届けると、先輩はようやく口を開いた。
「毎週月曜日の昼休みに喫煙所の前でミーティングやってるから、サークルの詳細はそんとき話すから。」
「あっ。はい。よろしくお願いします。」
頭を下げながらそう言って、ささっと部室を後にした。