ROCKな人魚姫《前編》
「遅れて行って後ろのほうで聞いてたよ。・・・ま、終わる前に出たけど・・・」
そして、再びシノブの視線は、あたしにむけられた。
「れん、サークル入部した?俺とユウ、さっき入ってきたんだよね。ここ入れば、他のメンバーとかも見つかると思うし、部室でバンド練習できるし。」
「入ったよ。あたしも二人にどうしたか聞こうと思ってたんだよね。昨日、携帯番号も聞かなかったから、聞けなくって。」
「あっ。そうだよな。じゃあ、教えて。ワンギリするから」
「んとねぇ、090-○○○○-××××」
まだ赤外線通信なんてなかった時代。
あたしの携帯が光り、シノブの番号が入ったことを知らせる。
「ユウも交換しとけ?」
シノブはあたしたちのやりとりを横で見ていただけのユウに話をふり、あたしとユウも番号交換をした。
「とりあえず、サークルのミーティングが月曜日って言ってたじゃん。だから、練習する時間とか、詳細はそん時決めよう」
「そだね。わかったぁ。」
「じゃ、俺ら先に帰るから。」
そう言って、シノブとユウは喫煙所を出て行った。
あたしは二人の背中に手を振ったとき、ユウが後ろを振り返ってニコっと笑い、あたしに手を振った。
ユウとは、一言、二言くらいしか会話したことなかったけど、その笑顔にあたしは思わずドキッとしてしまった。