ROCKな人魚姫《前編》
あたしは、初めて体験するこのもやもやを吹き飛ばしてしまいたいと思った。
うまく言葉にできないこの気持ち。
「ねぇ、タバコ一本くれない?」
そんな気持ちから、気づけばあたしはそう言っていた。
「おっ。ついにタバコデビューか?いいよ。だけど、俺の吸ってるやつ、結構キツイから初めて吸うのに大丈夫かな。」
箱から一本取り出されると、あたしはためらいもせずに口にくわえた。
タバコを銜えて息を吸いながら火をつける。
ジュワっと小さな音をたてて先端に火が点され、あたしの体の中にタバコの味が染み渡り・・・・
「ゴホッ!!ゴホゴホ・・・・」
すごい勢いでむせてしまった。
「ほらむせた。最初は軽いやつのほうが吸いやすいって。」
笑いながら、咳き込むあたしの顔を覗き込む。
なんだかからかわれているような言い方にむきになり、
呼吸を整えて、その一本を吸いきった。