ROCKな人魚姫《前編》
あたしの気持ち
「んじゃあ、今日は初練習おつかれー!!」
ドリンクバーのジュースで乾杯する。
「ってかさ、高明くんは初練習じゃないし(笑)」
「細かい事はいいんだよ。乾杯する口実だろ?」
ストローを加えて、メロンソーダをゴクゴクと飲む高明くん。
一気飲みすると、タバコに火をつけた。
ちょっとタバコを控えようと思ったあたしは、することがなくて、グラスのなかの氷をストローでぐるぐるとまわした。
「んで、練習どうだったの?」
あたしに煙がかからないように横を向いて煙を吐きながらそう言った。
「二人とも、すごかったよー!!あたしも負けてられないよ!!」
あの時の感動を高明くんにも伝えたかった。
だけど、音楽のことにはあまり興味がないのか、ふぅんという感じで流されてしまった。
「で、惚れちゃった?二人のどっちかに」
ニヤニヤしながらあたしを見つめる。
「あー、二人の腕前に惚れたよ。すごいもん!!」
高明くんの言葉にドキッとした。
一瞬、ユウの顔が浮かんだが、あたしとしては、うまく交わせたと思う。
「そっちこそ、大学で可愛い子見つけたの~?」
仕返しにあたしも質問してやった。
「えっ?」
と言いつつも、ちょっとはずかしそうにしながらタバコの火を消すと高明くんは口を開いた。