好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
(お嬢様はこれから、どうなさるおつもりだろう?)
人は自分が予想したとおりに動くとは限らない。アリスに関して言えば既に、レヴィが考えていたのとは違った動きを見せている。
しかし、他人は制御できずとも、自分がどう動くかは自分自身で決めることができる。
レヴィはそっと目を伏せ、やがて前を見据えた。
「旦那様、私は決して、旦那様を裏切りません」
言葉とは裏腹に、昨夜のアリスの切なげな表情が、口づけの甘さが脳裏にチラつく。それらを必死で振り払いながら、彼はこう続けた。
「こちらでお世話になると決まった際、私は誓いました。『お嬢様の幸せは私が守り抜きます』と」
この十年間、その想いこそがレヴィの原動力であり、全てだった。
アリスが幸せになれるならば、レヴィは己の全てを投げ打つことができる。悪になる覚悟だってある。
これから彼が何をしようとしているのか、どう動くのか――――ハッキリと言葉にしなくても、表情から伝わってくる。
伯爵はしばらく何かを逡巡し、それからそっと肩を落とす。
「――――頼んだよ、レヴィ」
レヴィは力強く頷き、深々と頭を下げる。
何故だろう? 目頭がとても熱かった。
人は自分が予想したとおりに動くとは限らない。アリスに関して言えば既に、レヴィが考えていたのとは違った動きを見せている。
しかし、他人は制御できずとも、自分がどう動くかは自分自身で決めることができる。
レヴィはそっと目を伏せ、やがて前を見据えた。
「旦那様、私は決して、旦那様を裏切りません」
言葉とは裏腹に、昨夜のアリスの切なげな表情が、口づけの甘さが脳裏にチラつく。それらを必死で振り払いながら、彼はこう続けた。
「こちらでお世話になると決まった際、私は誓いました。『お嬢様の幸せは私が守り抜きます』と」
この十年間、その想いこそがレヴィの原動力であり、全てだった。
アリスが幸せになれるならば、レヴィは己の全てを投げ打つことができる。悪になる覚悟だってある。
これから彼が何をしようとしているのか、どう動くのか――――ハッキリと言葉にしなくても、表情から伝わってくる。
伯爵はしばらく何かを逡巡し、それからそっと肩を落とす。
「――――頼んだよ、レヴィ」
レヴィは力強く頷き、深々と頭を下げる。
何故だろう? 目頭がとても熱かった。