好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「どうして分かってくれないの?」


 結婚が押し迫ってきたある日のこと、痺れを切らしたアリスがレヴィの元へとやってきた。

 アリスの瞳には涙がたまっている。とてもじゃないが見ていられない。


 苦しい。
 切ない。
 もどかしい。


 アリスはまだ、レヴィのことが好きなのだ。
 好きで好きでたまらないのだ。


 レヴィは大きく息を吸い、それから首を横に振った。


「分かるとは、具体的に何をすれば良いのですか? このまま私と二人で、この家を飛び出すのが良いと、本当にお思いですか? 全てを捨ててまで?」

「――――ええ、そうよ! 一緒にお父様を説得して! ダメだったら私と一緒にこの家を出てほしいの。
だって、私はレヴィじゃなきゃ嫌だもの。他の人じゃダメなんだもの。反対されても構わない。誰にも祝福されなくたって構わない。だから――――」

「お嬢様は私のことを誤解していらっしゃいます」


 レヴィはため息を吐きつつ、アリスの元へと歩を進める。彼女の頬をそっと撫でる。
 アリスは驚きつつ、期待と不安の入り乱れた眼差しでレヴィのことを見つめた。


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