好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
 それから数日後、唐突に転機が訪れた。


「奥様が侯爵領に……?」

「ああ。我ながら過保護だと思うが、アリスの様子を見に行ってもらおうと思っているんだ」


 伯爵から呼び出されたレヴィはそんな話を聞かされた。
 その途端、レヴィの心が興奮で高鳴り、一気に活力がみなぎってくる。


(これでお嬢様の様子を知ることができる!)


 この瞬間をどれほど待ち望んでいたか――――思っていた以上に、レヴィはアリスの近況を渇望していたらしい。あまりの嬉しさに、大声で叫びながら庭中を走り回りたい気分だった。


「過保護だなんてとんでもない! とても素晴らしいことだと思います! みなが――――私はお嬢様のことを本当に心配しておりましたから。
しかし、そうと決まったなら急がなくては……お嬢様へのお土産を準備しなくてはなりません」


 レヴィは指を折りながら、アリスに贈るべき品物をリストアップしていく。

 ドレスに宝石、流行りの本や、孤児院の子どもたちから届いたアリス宛ての手紙。他にも、アリスに渡したいものがたくさんある。


(喜んでいただけるだろうか?)


 いや、それじゃダメだ。必ずアリスを喜ばせなければならない。


「ふふ……頼んだよ、レヴィ」

「はい! お任せください」


 レヴィはドンと胸をたたき、瞳を輝かせる。
 久しぶりに呼吸ができたような――――生き返ったような心地がした。


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