好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
***
それから数日後、アリスを返せという催促の手紙が侯爵から届いた。
伯爵はアリスが侯爵と離婚できるよう話し合いの場を設けたのだが、話が全く折り合わない。
権力をチラつかせられ、事業や領民たちを人質にされてしまい、離婚は不可能だという結論に持っていかれてしまう。
「――――私、帰るわ」
アリスの言葉に、伯爵が息を呑み、首を横に振る。
「家のことは気にしなくて良いんだ! 今更かもしれないが、私はアリスに幸せになってほしい! 自ら不幸になる必要なんて……」
「大丈夫よ」
穏やかに微笑みながら、アリスは言う。
「私は今、幸せだもの。二度と不幸になんてならないわ。夫がその気なら、こちらも存分に利用させていただくだけ。あちらから提示された条件に乗っかろうと思うの。良いでしょう、お父様?」
アリスの視線を辿りながら、伯爵は静かに目を見開く。
(本当にそれで良いのだろうか?)
これは大きな賭けだ。
葛藤がないわけではない。
他に道はないのだろうか。下手をすれば、全てを失う羽目になるのではないか、と。
けれど今はアリスの笑顔を、幸せを第一に考えたい。
―――それから伯爵はとても微かに頷いた。
それから数日後、アリスを返せという催促の手紙が侯爵から届いた。
伯爵はアリスが侯爵と離婚できるよう話し合いの場を設けたのだが、話が全く折り合わない。
権力をチラつかせられ、事業や領民たちを人質にされてしまい、離婚は不可能だという結論に持っていかれてしまう。
「――――私、帰るわ」
アリスの言葉に、伯爵が息を呑み、首を横に振る。
「家のことは気にしなくて良いんだ! 今更かもしれないが、私はアリスに幸せになってほしい! 自ら不幸になる必要なんて……」
「大丈夫よ」
穏やかに微笑みながら、アリスは言う。
「私は今、幸せだもの。二度と不幸になんてならないわ。夫がその気なら、こちらも存分に利用させていただくだけ。あちらから提示された条件に乗っかろうと思うの。良いでしょう、お父様?」
アリスの視線を辿りながら、伯爵は静かに目を見開く。
(本当にそれで良いのだろうか?)
これは大きな賭けだ。
葛藤がないわけではない。
他に道はないのだろうか。下手をすれば、全てを失う羽目になるのではないか、と。
けれど今はアリスの笑顔を、幸せを第一に考えたい。
―――それから伯爵はとても微かに頷いた。