好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「ねえ、もしも――――もしもよ? ステファン殿下にいきなりキスされたら、サルビアならどうする?」

「え? ステファン殿下に? ふふっ……それってとても素敵な想像ね」


 メリンダが尋ねた瞬間、サルビアは楽しそうに笑い声を上げた。あまりにも荒唐無稽な夢物語だと受け取ったのだろう。笑ってくれてよかったと、メリンダは心の底から安心する。


「そうねぇ。私がもしステファン殿下にキスをされたら――――浮かれちゃうでしょうねぇ。殿下に見初められた! って周りに自慢したくなるかも。
それから、殿下の気持ちを確かめて――――『僕の妃になってくれ!』なんて言われちゃったりして! 『僕はリズベットじゃなく、君が良いんだ』なんて言われたら最高よね」

「え? そ……そうかな」


 完全に夢見る乙女の表情になったサルビアは、次から次に妄想を膨らませていく。彼女はキラキラと瞳を輝かせ、メリンダの手をギュッと握った。


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