好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「わたし、とっても嫌だった。あんなふうに言われるなんて……ジェラルドと遊んじゃいけないなんて知らなかったもん。
ねえ、どうやったらあんなこと言われなくなる? お母様や他の侍女たちみたいにジェラルドに接したら良いの?」

「――――ええ、そうね。そうすれば、注意されることはなくなると思うわ。
だけど、いきなり態度を変えることができる? 相手は姉弟みたいに育ってきたジェラルド様よ? それなのに……」

「できるわ! わたし、これからはお母様たちと同じ侍女になる!」



 その日から、メアリーの日常は一変した。
 彼女は子供らしく遊ぶことを止め、見様見真似で侍女たちの仕事を手伝いはじめる。

 掃除に洗濯、調理場の手伝いや給仕など、ありとあらゆる仕事をした。すぐに戦力になるわけではないが、やらないことには覚えない。メアリーは積極的に質問をし、貪欲に仕事をこなしていった。


 けれど、日常が一変したのはメアリーだけじゃない。彼女と多くの時間をともにしてきたジェラルドも一緒だった。


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