好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。

2.メアリーの主張

 一般的に、女の子のほうが男の子よりも早く大人になる。
 メアリーはすぐに侍女としての自分に慣れ、活き活きと仕事をはじめた。

 先輩侍女たちは彼女が赤ちゃんの頃から知っていることもあって、とても優しく仕事を教えてくれるし、手放しで褒めてくれる。自分が誰かの役に立てている実感を得られることが、メアリーはとても嬉しかった。


 しかし、そんな生活に思わぬ形で待ったがかかってしまう。


 ある日のこと、メアリーはジェラルドの父親であるスプレンデンス伯爵に呼び出された。彼の隣にはジェラルドが居て、メアリーは思わずドキッとする。


(一体何の用だろう?)


 彼女は深々と頭を下げ、再び声がかかるのを待った。


「そうかしこまらないで。向かいのソファに座りなさい」

(ソファに? だけど……)


 侍女というのはただの使用人で、そんなふうに丁寧な扱いを受けるべき存在ではない。立ったまま話を聞いて然るべきだ。
 メアリーが無言でためらっていると、ジェラルドが「座れって言われただろう?」と言い、眉間に皺を寄せた。


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