好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「それに、君はまだ8歳なんだし、別に働かなくても良いんだ。ジェラルドと一緒に、楽しく遊んでくれたらそれで良いんだよ?」

「……けれど旦那様、この屋敷にはわたし以外にも使用人たちの子供が居ます。わたしだけを特別扱いをするのはダメです。不公平です。彼等が仕事をしている以上、わたしも仕事をすべきだと思います」


 使用人の子供たちが何歳から働かなければならないという明確な掟はない。雇用契約を結べる年齢になるまでは自由に過ごせることになっている。
 けれど、住み込みで面倒をみてもらっている以上、彼らはみな、幼くして仕事をしている。

 同じ平民の身分に生まれた以上、自分だって扱いは同じであるべきだ。メアリーの主張には筋が通っていて、伯爵は思わず面食らってしまう。


「それに、侍女の仕事って案外楽しいんです。多分、性に合っているんだと思います。ですから、このまま侍女を続けさせてください。
わたしは後ろめたさを感じながら生活をしたくないんです」


 正しく生きていれば誰からも後ろ指をさされることはない。そうすれば自ずと傷つく回数は少なく済む。メアリーは8歳にして、この世の理を学んでいた。


< 148 / 234 >

この作品をシェア

pagetop