好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。

3.侍女たちのおせっかい

 その日以降、ジェラルドはすっかり不貞腐れてしまった。
 伯爵との会話を最後まで話を聞いていないため想像でしかないが、おそらくはこってり絞られたのだろう。彼の主張は、貴族が決して口にしてはいけないことだったから。


(なんだかなぁ……気の毒ではあるのよね)


 ある日突然、仲の良かった遊び相手が居なくなってしまった――――子供にとっては結構大きな出来事だ。ジェラルドには2歳差の弟がいるが、彼と過ごす時間よりもメアリーとの時間のほうがずっと多かった。今更、という気持ちが強いのだろう。

 あんなに活発で明るかったジェラルドが、ここ最近いつもシュンと肩を落としているし、寂しそうにしている。伯爵家で飼っている犬がちょうどあんな感じだ。主人にかまってもらえず、いじけているかのように見えて、メアリーの心が揺さぶられる。


「メアリー、ちょっと良い?」

「はい、何でしょう?」


 そんなことを考えながら仕事をしていると、先輩侍女から声をかけられた。
 年配のベテラン侍女で、主にジェラルドの身の回りの世話を担当している。彼と一緒に遊んでいるときに、メアリーも相当世話になった。包容力に溢れていて、頼り甲斐のあるおばあちゃんのような存在だ。


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