好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
 テーブルの側までワゴンを運び、メアリーはいそいそとお茶の準備をはじめる。
 事前に手順は習ってきたが、人に振る舞うのははじめてのため、とても緊張してしまう。それなのに、ジェラルドはメアリーの手元を嬉々として覗き込んでくるため、余計に気が散ってしまった。


「あの〜〜」

「なんだ?」

「そんなに見られると用意しづらいんですけど」


 というか、ソファに座ってほしい――――決して声には出さず、メアリーはジェラルドをじとっと睨む。


「良いだろう? こうして二人でゆっくりできるの、久しぶりなんだし」


 ジェラルドが笑う。見ていて気持ちが良くなるような満面の笑みだ。
 余程寂しかったのだろう。メアリーは改めて申し訳なくなってくる。


「気持ちは分かるけど、失敗しちゃいそうだから止めてください。渋いお茶は嫌いでしょう? ……まあ、はじめてだし、慎重に淹れたところで失敗しちゃうかもしれないけど」

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