好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「別に良い。メアリーが淹れてくれたお茶なら、何杯でも飲むよ、俺。お茶の間はずっとここにいてくれるんだろう?」

「……うん」


 同い年のはずなのに、メアリーにとってジェラルドは随分幼く感じられる。まるで手のかかる可愛い弟のような存在だ。身分について考えたことのない頃は、こういうときはよしよしと頭を撫でてやったのだが、今となっては絶対に無理だし恥ずかしい。メアリーはほんのりと頬を赤らめた。


 一杯目のお茶は、実に上手く淹れられた。色合いも香りも、先輩侍女たちが淹れてくれたとおりだ。


「メアリーも飲んでみろよ。自分で淹れた記念すべき最初の一杯だろう?」

「そうですね、それじゃあ……」


 ジェラルドに促され、メアリーはジェラルドの向かい側に座る。それから、彼と同じタイミングでお茶を口に含んだ。


「……! 良かった、ちゃんと美味しい!」


 安堵のあまり、メアリーはついつい声を上げてしまう。ジェラルドはケラケラと笑いながら、「ホントだ、美味い!」と口にした。


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