好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「ジェラルド⁉」


 メアリーは慌ててジェラルドに駆け寄り、彼の顔を覗き込む。
 するとジェラルドは顔を真っ赤に染め、ふにゃっと目尻を和らげた。


「良かったぁ。もう二度と呼んでもらえないかと思った」

「大げさだなぁ、わたしに名前を呼ばれないくらいで」

「俺にとっては一大事なんだよ。ホント、良かった」


 大げさだと言いつつも、メアリーの胸はキュンと疼く。それがどうしてなのかはちっとも分からなかったが、悪い感情ではないことだけは確かで。


 そうこうしている間に淹れた二杯目のお茶は、渋みが出すぎてとても苦かった。

 けれど、ジェラルドは嫌な顔ひとつせずにそれを飲み干してくれて。
 メアリーは嬉しさのあまりニコニコと笑うのだった。
< 157 / 234 >

この作品をシェア

pagetop