好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「アカデミーはどう? 楽しい?」

「え? ……ああ、楽しいし充実してるよ。だけど、あそこにはメアリーが居ないから」


(〜〜〜〜またそういう……)


 せっかく話題を変えたのに、甘い空気から中々抜け出せない。メアリーが小さく息を吐くと、ジェラルドがクスクスと笑い声を上げた。


「周りは俺なんて目じゃないぐらい優秀な人ばかりでさ。すごく勉強になるし、行ってよかったと思ってるよ。再来年には王太子も入学してくる予定だしな。
俺、今のうちにアカデミーと王都で人脈を作って、今後に役立てたいと思っているんだ」

「そっか……すごいね。ジェラルドはいつか伯爵様になるんだもんね」


 メアリーとは違い、ジェラルドはしっかりと将来のことを見据えている。
 こんなふうに抱き締められていても、段々とメアリーの手の届かない人になっていく。メアリーの胸が小さく軋んだ。


「……そうやって、簡単に線を引くなよな。
俺は別に爵位を継ぐために頑張ってるわけじゃないんだから」

「え? 違うの?」


 ジェラルドは嫡男だ。当然伯爵位を継ぐ予定だし、そのために頑張っているものだと思っていたのだが。


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