好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
 出迎えの挨拶を済ませた後、ジェラルドはすぐに伯爵の執務室へ向かうことになった。


(久しぶりだものね。つもる話が色々とあるんだろうなぁ)


 ふふ、と小さく微笑みつつ、メアリーは他の使用人たちとともにジェラルドの荷物を片付けはじめる。


「メアリー、ちょっと良いかい?」


 けれどそのとき、ふいに伯爵から呼び止められた。


「はい、なんでしょう?」

「執務室に二人分、お茶を準備してくれるかい?」

「承知しました。けれど、わたしでよろしいのですか?」


 メアリーの主な仕事は掃除や洗濯であり、伯爵や伯爵夫人の身の回りの世話は担当していない。そういうのはもっとベテランの侍女たちの仕事だ。自分が準備して良いものか、念のために確認してしまう。


「もちろん。久々の再会だし、メアリーが淹れてくれたほうが息子も喜ぶだろう。よろしく頼むよ」

「お任せください」


 伯爵の返答を聞き、メアリーは快く仕事を請け負った。


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