好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
9.俺は嫌だよ
その日、メアリーの頭の中は、執務室で聞いた会話の内容で埋め尽くされていた。
(ジェラルドが婚約をしちゃう)
いつかはこんな日が来ると分かっていた。
心の準備だってしていた。
けれど、心の奥底で、別の道があるのではないかと――――ジェラルドがメアリーを選ぶ未来を想像していたことを思い知る。
(本当、馬鹿みたい)
メアリーはただの平民で、身分も名誉も資産もなければ、何の取り柄だってない。
つまり、彼女と結婚したところで、伯爵家にとって旨味が全く存在しないのだ。ジェラルドと結婚なんてできるはずがない。そんなの、当たり前の話だ。
おそらく伯爵は、そんなメアリーの気持ちを見抜いていたのだろう。現実を思い知らせるため、きちんと諦めさせるために、彼女を執務室に呼んだのだ。
(気づかなかった。わたし、いつの間にジェラルドのことをこんなに好きになっていたんだろう?)
ジェラルドは姉弟みたいな存在で。一緒にいるのが当たり前で。恋愛感情なんて抱きようがない――――彼を思う心は親愛の情だと思っていた。
けれど、そうだとしたら、メアリーは今こんなに悲しくないだろう。
まるで鋭利な刃物で胸を引き裂かれたかのような痛み。息苦しくてたまらない。真っ暗闇の中に迷い込んだかのごとく、全く前が見えなかった。
(ジェラルドが婚約をしちゃう)
いつかはこんな日が来ると分かっていた。
心の準備だってしていた。
けれど、心の奥底で、別の道があるのではないかと――――ジェラルドがメアリーを選ぶ未来を想像していたことを思い知る。
(本当、馬鹿みたい)
メアリーはただの平民で、身分も名誉も資産もなければ、何の取り柄だってない。
つまり、彼女と結婚したところで、伯爵家にとって旨味が全く存在しないのだ。ジェラルドと結婚なんてできるはずがない。そんなの、当たり前の話だ。
おそらく伯爵は、そんなメアリーの気持ちを見抜いていたのだろう。現実を思い知らせるため、きちんと諦めさせるために、彼女を執務室に呼んだのだ。
(気づかなかった。わたし、いつの間にジェラルドのことをこんなに好きになっていたんだろう?)
ジェラルドは姉弟みたいな存在で。一緒にいるのが当たり前で。恋愛感情なんて抱きようがない――――彼を思う心は親愛の情だと思っていた。
けれど、そうだとしたら、メアリーは今こんなに悲しくないだろう。
まるで鋭利な刃物で胸を引き裂かれたかのような痛み。息苦しくてたまらない。真っ暗闇の中に迷い込んだかのごとく、全く前が見えなかった。