好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「――――良かったね、ジェラルド。侯爵家のお嬢様を妻に迎えられるなんて、すごいことだよ。本当、おめでとう」
ジェラルドになんと言われるのか、怖くてたまらない。ならば先手を――――そんなふうに考えて、メアリーは心にもないことを口にする。
「……は?」
「わたしは貴族のことに疎いけどさ、アンジェルジャン侯爵家ってすごい名家なんでしょう? 婚約者も愛らしい方だって言っていたし、これで伯爵家の将来も安泰っていうか。
……本当、良かったね」
嘘だ。
本当は、ちっとも良くなかった。
だけど、素直な気持ちを打ち明けるわけにはいかない。ジェラルドの顔をちっとも見ないまま、メアリーは無理やり笑みを浮かべた。
「その言葉、俺の目を見ながらもう一度言ってみろ」
ジェラルドの声が冷たく響く。
彼はメアリーの顎を掬い、顔を覗き込んできた。
「メアリーは俺が他の女と結婚して、本気でいいと思ってるの?」
「そ、れは……」
本当は迷わず『イエス』と答えるべきなのだろう。だけど、喉がつかえたかのごとく、声が、言葉がでてこない。
「俺は嫌だよ」
ジェラルドが言う。メアリーの瞳に涙が滲む。
ジェラルドになんと言われるのか、怖くてたまらない。ならば先手を――――そんなふうに考えて、メアリーは心にもないことを口にする。
「……は?」
「わたしは貴族のことに疎いけどさ、アンジェルジャン侯爵家ってすごい名家なんでしょう? 婚約者も愛らしい方だって言っていたし、これで伯爵家の将来も安泰っていうか。
……本当、良かったね」
嘘だ。
本当は、ちっとも良くなかった。
だけど、素直な気持ちを打ち明けるわけにはいかない。ジェラルドの顔をちっとも見ないまま、メアリーは無理やり笑みを浮かべた。
「その言葉、俺の目を見ながらもう一度言ってみろ」
ジェラルドの声が冷たく響く。
彼はメアリーの顎を掬い、顔を覗き込んできた。
「メアリーは俺が他の女と結婚して、本気でいいと思ってるの?」
「そ、れは……」
本当は迷わず『イエス』と答えるべきなのだろう。だけど、喉がつかえたかのごとく、声が、言葉がでてこない。
「俺は嫌だよ」
ジェラルドが言う。メアリーの瞳に涙が滲む。