好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。

10.非公式な来訪者

 翌朝、メアリーは寝不足でフラフラになりながらも、いつものように仕事をこなしていた。


(ジェラルドはこれからどうするつもりだろう?)


 あの後、メアリーがジェラルドから言われたことは2つだけ。
 彼はメアリーと結婚をするつもりだということ、これから伯爵を説得するつもりだということだ。

 具体的にはどんなふうに動くつもりなのか聞かされていないし、メアリーの気持ちだって聞かれていない。


『メアリーはただ、俺を信じて待っていて』


 口づけのあと、彼はメアリーのことを抱き締めた。その表情からは憂いも迷いも微塵も見えない。必ず成し遂げるという強い覚悟がうかがえた。



 とはいえ、伯爵家は驚くほどに平和だった。
 ジェラルドと伯爵が言い争っている様子もなければ、彼の婚約は噂にすらなっていない。本当ならば成婚に向けて浮足立ち、準備に奔走してもおかしくないはずだ。

 同僚たちの様子も本当いいつもどおりで、メアリーは拍子抜けしてしまう。


< 193 / 234 >

この作品をシェア

pagetop