好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
(お相手の令嬢は15歳っていう話だったから、結婚までは最低でもあと3年……まだ時間があるからってことなのかしら?)


 ジェラルド自身が情報統制に動いている可能性もあるけれど、伯爵が執事や侍女たちに打ち明けてしまえばそれで終わり。彼の婚約話はまたたく間に広がるだろう。

 そうなれば、ジェラルドがメアリーとの結婚を強固に進めるのは難しい。
 伯爵家におけるメアリーの立場は完全になくなってしまう。

 使用人のくせに、主家の不利益になることをするなんてありえないとの批判は免れない――――伯爵家で働き続けることだって難しくなるだろう。


 信じて待つように、という話だったが、本当にこのままで良いのだろうか? このままでは大事なものを失ったり、大変な事態に陥ってしまうのではないだろうか?


(第一、わたしはどうしたいと思っているの?)


 ジェラルドを信じ、彼との結婚を望みたいと思っているのか。
 身分の差があるからと諦め、ジェラルドを説得したいと思っているのか。
 はたまた、自ら身を引くべきだと思っているのか。


 分からないし、考えたくない。
 どうしてそう思うのか、その理由からも目を背けようとしてしまう――――。


< 194 / 234 >

この作品をシェア

pagetop