好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「だとしたら話が早いわ。あなたの客人ってことにして、私を中に入れてくれない? ほんの少しの間で良いの」

「え? えぇ……と」


 断れる立場でないという気持ちと、勝手なことをして大丈夫だろうか? という気持ちがせめぎ合う。
 あとで伯爵やジェラルドに怒られはしないだろうか? そもそも、ジェラルドの結婚にかかるメアリーの立ち位置は、とても微妙なものであるというのに。


「責任はすべて私が取るから安心して? あなたはただ、私の言うことを断れなかった――――それで良いの」


 アリティアはどこか切羽詰まった様子だった。こうまで頼まれては断れない。
 メアリーは躊躇いつつも、アリティアを屋敷の中に案内した。


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