好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「あなたには好きな人がいる?」
アリティアが尋ねる。
しばしの沈黙。
メアリーはやがて小さく頷いた。
「居ます。とびきり素敵な、大好きな人が」
もう誰にも――――本人にだって打ち明けられない想いかもしれない。
けれど、メアリーはジェラルドのことが好きだった。
大好きだった。
彼はメアリーが辛いときにそばに居てくれる。
メアリーが彼のそばにいることを望んでくれる。
本当は、そんなジェラルドの想いに応えたい。誰からも祝福されず、後ろ指をさされながら生きることは分かっているが――――。
「……私はね、本当に好きな人がいるなら、その想いは大切にすべきだと思うのよ。
数年前に陛下の妹君も身分の低い男性と結婚をなさったことだし、昔に比べて身分が絶対っていう風潮は和らいできたし、結婚へのハードルも下がってきているわ。形や体面ばかりを重視するせいで、中身が歪な結婚をするよりも、想いを貫いたほうが余程良いと思うの」
「想いを貫くって……」
アリティアはニコリと微笑むと、その場にゆっくりと立ち上がった。
「今日は色々とありがとう。本当は屋敷の中を少し見せてもらうだけのつもりだったのに、思わぬ大収穫だったわ。
また後日、今度は正式に屋敷を訪問させてもらうつもりだから、そのときはよろしくね」
彼女の表情はどこか晴れやかで。メアリーは呆然と、アリティアの後ろ姿を見送ったのだった。
アリティアが尋ねる。
しばしの沈黙。
メアリーはやがて小さく頷いた。
「居ます。とびきり素敵な、大好きな人が」
もう誰にも――――本人にだって打ち明けられない想いかもしれない。
けれど、メアリーはジェラルドのことが好きだった。
大好きだった。
彼はメアリーが辛いときにそばに居てくれる。
メアリーが彼のそばにいることを望んでくれる。
本当は、そんなジェラルドの想いに応えたい。誰からも祝福されず、後ろ指をさされながら生きることは分かっているが――――。
「……私はね、本当に好きな人がいるなら、その想いは大切にすべきだと思うのよ。
数年前に陛下の妹君も身分の低い男性と結婚をなさったことだし、昔に比べて身分が絶対っていう風潮は和らいできたし、結婚へのハードルも下がってきているわ。形や体面ばかりを重視するせいで、中身が歪な結婚をするよりも、想いを貫いたほうが余程良いと思うの」
「想いを貫くって……」
アリティアはニコリと微笑むと、その場にゆっくりと立ち上がった。
「今日は色々とありがとう。本当は屋敷の中を少し見せてもらうだけのつもりだったのに、思わぬ大収穫だったわ。
また後日、今度は正式に屋敷を訪問させてもらうつもりだから、そのときはよろしくね」
彼女の表情はどこか晴れやかで。メアリーは呆然と、アリティアの後ろ姿を見送ったのだった。