好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「貴族じゃなくなった俺は、なにも持っていないように見えるかもしれない。
だけど俺たちは絶対、幸せになれる。俺が絶対、メアリーのことを幸せにする。メアリーさえ側にいてくれたら、俺はなんだってできるから。
だからどうか――――どうか俺と結婚してほしい」


 ジェラルドはその場に跪き、真っ直ぐにメアリーのことを見つめた。


 彼の手には高価な指輪も、豪華な花束も握られてはいない。

 けれど、それでいい。
 それがいい。
 彼女が望んでいるのは、そんなものではないのだから。


「――――はい、喜んで!」


 メアリーが笑う。ジェラルドが笑う。
 二人は顔を見合わせながら、互いをきつく抱き締めるのだった。
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