好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
この縁談についてアリティアは『時期伯爵家当主と婚約をする』と聞かされていた。本来ならば、長兄であるジェラルドが結婚相手となるはずだった。
だが、途中で状況が変わってしまったらしい。いや――――そもそも最初に名前を聞かされていなかった時点で、こうなることは伯爵家にとっては想定の範囲だったのだろう。
それで良い――――アリティアははじめて屋敷に忍び込んだときに出会った侍女の顔を思い出しつつ、ふふと唇を綻ばせた。
「今度僕も、君のお屋敷に行っても良い? そろそろ侯爵さまにご挨拶をしたほうが良いと思うんだ。式の打ち合わせもさせていただきたいし」
「そうねぇ……来てもらってもいいけれど、侯爵とは全く話にならないわよ? うちの屋敷には2つの勢力が存在するから。話すとしたら母のほうね」
「……2つの勢力?」
ジェフリーの問いかけに、アリティアはコクリと大きく頷く。
「――――もしかしたら幻滅させてしまうかも知れないのだけど……聞いてくれる? 結婚前に話しておきたかったことがあるの」
余程大事な話なのだろう。アリティアがしっかりと前置きをする。ジェフリーは「もちろん」と口にして、穏やかに微笑んだ。
だが、途中で状況が変わってしまったらしい。いや――――そもそも最初に名前を聞かされていなかった時点で、こうなることは伯爵家にとっては想定の範囲だったのだろう。
それで良い――――アリティアははじめて屋敷に忍び込んだときに出会った侍女の顔を思い出しつつ、ふふと唇を綻ばせた。
「今度僕も、君のお屋敷に行っても良い? そろそろ侯爵さまにご挨拶をしたほうが良いと思うんだ。式の打ち合わせもさせていただきたいし」
「そうねぇ……来てもらってもいいけれど、侯爵とは全く話にならないわよ? うちの屋敷には2つの勢力が存在するから。話すとしたら母のほうね」
「……2つの勢力?」
ジェフリーの問いかけに、アリティアはコクリと大きく頷く。
「――――もしかしたら幻滅させてしまうかも知れないのだけど……聞いてくれる? 結婚前に話しておきたかったことがあるの」
余程大事な話なのだろう。アリティアがしっかりと前置きをする。ジェフリーは「もちろん」と口にして、穏やかに微笑んだ。