好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「誰の子として生まれるかということより、どんなふうに生きるかのほうがずっとずっと大事だと思う。そもそも、貴族の血が流れているかどうかなんて、身なりや立ち居振る舞いでしか判断できないだろう?
もしかしたら、僕たちが知らないだけで、とんでもなく高貴な血の持ち主が身近にいるかも知れないし、ね」


 アリティアの頭を撫でながら、ジェフリーは穏やかに瞳を細める。


「……それもそうね」


 人は誰しも親を選ぶことができない。
 けれど、どんなふうに生きていくか――――それを決めるのは、他ならぬ自分自身だ。


「ジェフリー、私……幸せになりたい」


 元々は普通の政略結婚ができればいいと思っていた。可もなく不可もない、平凡な貴族の家庭を築ければそれで満足だった。


 けれどアリティアは欲が出た。


 この人と共に幸せになりたい――――アリティアの言葉に、ジェフリーは力強く頷く。


「もちろん。幸せになろう」


 二人は額を重ね合い、触れるだけの口づけを交わした。
< 216 / 234 >

この作品をシェア

pagetop