好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
 文官として生きていくにあたって、人脈は広ければ広いほど良いし、できる限り偉い人物と知り合いになりたい――――そんな魂胆から、ジェラルドはアカデミーの在学中に、王太子との交流を持つことに成功した。

 秀才揃いのアカデミーの中でもジェラルドは優秀だったし、向上心も強い。彼はすぐに王太子に気に入られた。


『何がお前をそんなに突き動かすんだ?』


 ジェラルドが自身の原動力――――メアリーとの結婚や弟に家督を譲ったことを伝えたところ、是非詳しく話を聞かせてほしいと言われていた。そうして今日、アカデミーが長期休暇の間に、メアリーと共に王宮に足を運ぶことになったのである。


「そっか……そうよね。だけど、緊張してしまうわ。なにかとんでもない粗相をしないと良いのだけど」

「大丈夫だよ。俺がちゃんとフォローするから。メアリーは安心して、俺についてきて」


 ジェラルドが微笑む。
 メアリーは困ったように微笑みつつも、コクリと小さく頷いた。


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