好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
 と、そのとき、ジェラルドたちの向かう方角から、数人の男性が見えてきた。
 王太子が出迎えに来てくれたのだろうか――――一瞬そんなふうに思ったものの、真ん中の人物も、その周りの人物たちも、とても同年代とは思えない。どちらかといえば、ジェラルドの父親たちと同じぐらいの年代だ。

 美しく豪奢な衣装、滲み出る高貴なオーラ。ジェラルドは急いで道の脇に移動し、頭を下げるようメアリーに耳打ちをする。


「メリンダ……?」


 と、そのとき、男性がそう呟いた。


「…………え?」


 驚きに見開かれた瞳。
 男性が口にしたのは、二人にとって慣れ親しんだ名前である。
 ジェラルドとメアリーはそっと顔を見合わせた。
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