好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「君は――――君の名前は?」


 ステファンが尋ねる。
 返事をしてよいか確認を取っているのだろう。少女は隣の男性と目配せをしてから、おそるおそる口を開いた。


「はい、メアリーと申します」

「そうか……メアリー、君はメリンダという女性を知っているだろうか?」


 心臓がドキドキと鳴り響く。メアリーは瞳を瞬き、ステファンのことをそっと見上げた。


「その……同じ人物を指しているかは分かりませんが――――わたしの母がメリンダという名前です」


 ――――やはり。

 ステファンの目頭が熱くなる。
 間違いない。
 メアリーはメリンダの娘だ。


 嬉しいのか、悲しいのか、自分でもよく分からない感情が心のなかで暴れている。ステファンはそっと胸を押さえた。


「そうか……。急に呼び止められてびっくりしただろう。
私はステファン――――この国の国王だ」


 ステファンの身分に気づいていなかったのだろう。メアリーはハッと大きく息を呑み、それからもう一度深々と頭を下げた。


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