好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
 彼の部屋の扉を守る護衛騎士たちは、メリンダの姿を認めてから、頭を下げて後退する。彼女がここに来ることは、彼等に織り込み済みらしい。

 ステファンの部屋の前に立ち、メリンダは静かに息を呑んだ。
 早くノックをするべきだと分かっている。けれど、どうしても思い切ることができない。
 騎士たちの視線を背後から感じ、ものすごく居た堪れないし、落ち着かない。


(やっぱり帰ろう)


 メリンダが踵を返そうとしたそのとき、目の前の扉が静かに開いた。


「あっ……」


 戸惑うメリンダの視界に飛び込んでくる、ステファンの笑顔。


「待っていたよ、メリンダ」


 腕を引かれ、強く抱きしめられる。メリンダの背後で扉がパタンと閉まった。


「ステファン様、わたしは……」

「黙って」


 ステファンがメリンダの口を塞ぐ。額に、頬に、唇に口づけながら指を絡め、腰をぐいっと抱き寄せた。


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