好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。

7.秘密の関係

 朝日が昇りはじめる気配を感じ、メリンダはそっと瞳を開けた。
 普段使っているものよりも数段柔らかい寝具に、高い天井。隣には己とは異なるぬくもりがあり、メリンダの心臓がドキッと跳ねる。


(ああ、ついに……)


 流されてしまった。


 ――――なんて、そんなの嘘。

 ここに来れば、こういうことになるかもしれないと、メリンダはきちんと分かっていた。
 寧ろ、それ以外の道はないと気づいていた。
 だからこそ、きちんと身支度を整え、気持ちの整理をしてからここに来たのだ。


『違うんです! わたしはただ、こういうことをされては困ると伝えたくて……』

『本当に?』


 ステファンはそんなメリンダの本音をしっかりと見抜いていた。彼女の心が本当は自分の元にあると気づいていた。本当はメリンダも彼の手を取りたがっていることを利用したのだ。

 そこまで分かっていながら、鈍いふりなどとてもできない。愚かな言い訳ができる立場にないことを、メリンダは強く自覚していた。


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