好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「起こさないよう気をつけていたのですが……申し訳ございません」

「そんなことは別に良いんだ。寧ろ、メリンダが勝手に僕の元から居なくなってしまう方がずっと困る」


 ステファンはメリンダを抱き込み、はあ、と大きなため息を吐く。


「そういうわけには参りませんわ。城の皆が起き出す前に、寮に戻らなければなりませんもの。それに、殿下のお目覚めの時間にはまだ早いので、眠っておいていただかないと」

「そんな寂しいことを言わないでくれ。僕は君がここに居る喜びを噛み締めたいんだ。これからここを出るときは必ず、僕に声をかけるように。いいね?」


 額に、頬に口づけながら、ステファンは穏やかに瞳を細める。メリンダは静かに頷いた。


「……っと、殿下! そろそろ放してください。仕事に遅れてしまいます」

「もう少しだけ、良いだろう?」


 昨夜散々抱きあったというのに、ステファンはちっともメリンダを放そうとしない。一方、放してと言いつつ、メリンダも嬉しそうにステファンの胸に顔を埋めた。


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