好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「最っ低」


 ボソリと、すれ違いざまに囁かれた同僚の言葉に、メリンダは胸が痛くなる。恥ずかしさのあまり、頬が熱く染まる。

 言われても仕方がないことをしている――――そう分かっている。
 だから、メリンダは必死に前を向く。

 何事もなかったかのように振る舞い、その日の仕事を無事に終えた。



「メリンダ」


 それから、夜になるといつものようにステファンの部屋に向かった。
 彼の腕に抱かれ、甘やかされると、昼間の出来事がなかったかのように――――どうでも良くなってくる。


「愛してるよ、メリンダ」


 ステファンにそう囁かれるだけで、心と体が甘く満たされ、癒やされるような心地がした。何度も何度もキスをして、求め、求められることで、自分の罪などどうでも良くなっていった。


「――――メリンダは本当に可愛いね」


 高まりきった熱を冷まし、二人で微睡んでいる最中、ステファンが思い出したようにそう囁く。


(メリンダは……?)


 いつも全くと同じ言葉だけれど、今夜は誰かと比べられているような――――なんともいえない違和感を抱いてしまう。メリンダはそっと身を乗り出し、ステファンの顔を覗き込んだ。


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