好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「あの……ステファン殿下」

「なんだい、メリンダ?」


(――――リズベット様にもう少し優しくなさったらいかがでしょう?)


 本当はそう伝えようと思っていた。
 けれど、すんでのところで言葉が詰まり、上手く出てきてくれない。

 メリンダはステファンが好きだ。
 ステファンに愛されるのは自分であってほしいし、他の人に渡したくないという気持ちもある。


(だけど、わたしは本当にそれで良いの?)


 昼間のリズベットの表情と言葉が胸にこびりつき、離れてくれそうな気配がない。

 彼女はいずれステファンと婚約をし、結婚をする。
 けれどそうすると、メリンダはステファンと別れなければならない。離れなければならない。
 そのときを思うと、とても寂しいし、辛くなる。

 それでも、リズベットこそがステファンに大切にされるべき人で、メリンダは彼女が得られるはずのものを奪っている――――自覚はある。葛藤もある。簡単に消えようはずもない。


「愛しています」


 散々悩んだ挙げ句、メリンダはそう口にした。
 ステファンは嬉しそうに目を細めると、メリンダに熱く口づけるのだった。
 
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