好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
 また、サルビアはメリンダにとって、安全基地のような存在だった。唯一本心を打ち明けられる相手であり、バイアスのかかっていない情報を与えてくれる相手でもある。


「――――知りたくないかもしれないけど、一応伝えておくわね。ステファン殿下とリズベット様の婚約、破談になるかもしれないんですって」

「え……? 破談?」

 
 その瞬間、メリンダは大きく目を見開き、思わずその場にうずくまる。心臓がバクバクと嫌な音を立てて鳴り響き、あまりの気持ちの悪さに息が上手くできなくなった。


(バカじゃないの、わたし! こうなる可能性があるってちゃんと分かっていたでしょう?)


 加害者ならば加害者らしく、自分のしたことにきちんと向き合い、苦しむ素振りなど見せるべきではない。被害者ぶって嘆くなんてもってのほかだ。
 心のなかで自分を詰りながら、メリンダはグッと前を向く。

 けれどダメだった。
 すぐにとてつもない罪悪感に襲われ、押しつぶされそうになってしまう。


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