好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。

11.愛の獲得、愛の証明(1章最終話)

(朝か……)


 絶望感に苛まれつつ、ステファンは目を覚ました。

 身体が鉛のように重く、とても苦しい。いつも隣にあった小さな温もりが、メリンダの姿がここにない。


(メリンダ……)


 彼女に別れを告げられたのはほんの数時間前のこと。ステファンには、とてもじゃないが現実を受け入れられそうにない。

 目を瞑ると、メリンダの笑顔が、声がありありと浮かび上がる。彼女の細い体を腕の中に閉じ込め、甘い香りを、柔らかさを堪能し、何度も何度も口づける――――ステファンにとって、それは当たり前の日常だった。ずっと続くものだと思っていた。
 けれど、そんな彼の日常は、願いは、ほんの一瞬で失われてしまった。虚しさが、心と身体を支配する。


「メリンダ」


 広い部屋の中、ステファンの声がポツリと響く。


「そこに居るんだろう?」


 しかし、どれだけ待ったところで、返事は返ってこなかった。

 ステファンはグッと拳を握り、ベッドから勢いよく立ち上がった。


< 67 / 234 >

この作品をシェア

pagetop