好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
(今すぐメリンダの顔が見たい。声が聞きたい。――――抱きしめたい)


 昨夜メリンダは『ステファンはメリンダのことを愛していない』と口にした。

 だが、それだけは違う――――断言ができる。


 ステファンはメリンダを愛していた。
 たとえ世界中の人々に認められなかったとしても、否定されても、敵に回そうとも、その想いは揺るぎない。

 メリンダが同じ気持ちを返してくれなくても、ステファンはそれで構わなかった。


(僕はメリンダに側に居てほしい)


 伝えよう。もう一度。
 ステファンが諦めない限り、道はある。

 みっともなくとも、人から後ろ指をさされようとも、メリンダを失うよりはずっとマシだ。今頑張らなければ、きっと一生後悔する。



「朝早くにすまない! ゾフィー、今からメリンダを貸してくれないだろうか? 大事な話が有るんだ! 頼む!」


 意気込み、妹の元に乗り込んだステファンは、やけに静かな部屋の様子に思わず息を呑んだ。

 王女の朝は忙しい。いつもならゾフィーはこの時間、何人もの使用人たちに囲まれ、傅かれ、姫君としての体裁を整えているずだ。

 けれど、ゾフィーの側には今、誰も居ない。
 メリンダの姿だって見当たらない。
 嫌な予感がステファンの胸を突く。


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