好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
 己が間違っていたことは素直に認めよう。
 冷静になった今、周囲にどれほど醜態を見せていたのか、呆れさせてしまったのか、容易に想像ができる。

 けれど、過ちを正していくことは、メリンダが側に居ても可能なはずだ。
 ステファンは涙を拭いつつ、手紙の続きに視線を落とす。


【もう一つ、殿下にお願いごとがございます。
もしも貴方がわたしのことを愛していると――――これからも愛し続けてくださると言うならば、わたしがこの国のどこに居ても、幸せに過ごせる――――そんな国にしていただきたいのです。
わたしはこれからも貴方のことを想い続けます。貴方のことをずっと見ています。
どうかわたしに、ステファン殿下を愛していると――――胸を張ってそう言わせてください。
それがわたしの一番の望みです】

「メリンダ!」


 ステファンはメリンダからの手紙を強く抱き締め、唇を寄せた。

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