好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「遊ぼう、お兄さん!」


 結局、アリスに説得される形で、レヴィは他の孤児たちの輪に入り、彼女と一緒に遊んだ。

 追いかけっこをしたり、土いじりをしたり、絵を描いたり――――普段ならば『くだらない』と吐き捨てる行動だが、幼い頃にそういった遊びをしていなかったせいだろうか? 案外楽しく感じられた。

 これまで捨ててきた何かを拾い集めているかのような、そんな奇妙な感覚。レヴィは楽しそうに笑うアリスを見ながら、こっそりと微笑んだ。


 けれど、彼女との時間はいつまでも続くわけではない。その日はあっという間に日が暮れてしまった。

 レヴィは孤児院の皆と施設の前に並び、アリスたちを見送る。


(楽しかったな……)


 これが楽しいという感覚なのだと、レヴィには分かった。
 それから今、去りゆくアリスを見つめながら自分が抱いている感情が『寂しい』『悲しい』というものだということも。


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