好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「レヴィは執事の役ね!」

「執事?」

「うん! 執事はね、アリスのことを可愛がってくれるんだよ」


 二人が出会ってから1年が経過したある日のこと、レヴィはアリスに求められるまま、ごっこ遊びをして遊んだ。

 このためだけに持参したのであろう、アリスの周りにはドレスやリボン、靴やバッグなどがたくさん用意されている。


「どれも大変お似合いですよ、お嬢様」


 少し気取った口調でそう言えば、アリスは瞳を輝かせて喜んだ。


「本当? レヴィはどれが一番可愛いと思う?」

「全てが。この世界のすべてのものがお嬢様のためだけに作られたかのように、僕には見えます」


 それは誇張でもなんでもない。
 レヴィはこの小さなお嬢様が、とてもとても大切だった。

 彼女を取り巻く世界はいつだってキラキラと輝いていてほしいし、優しいものであってほしい。
 アリスの望みならば何でも叶えてあげたいし、周りも同様であってほしい。


「嬉しい! ありがとう、レヴィ!
だけど、今日持ってきたものはレヴィと一緒に遊んだあとで、ここの女の子たちに使ってもらおうと思ってるの。喜んでくれると良いなぁ」


 アリスが微笑む。


(ああ、なんて……)


 この感情になんと名前をつければよいのだろう?
 胸いっぱいに温かい何かがこみ上げてくる。
 レヴィはそっと瞳を細めた。


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