幼馴染みの秘めた溺愛 ~お前は女神でヒーローで
ラピスニューグランドホテルは全国的に有名な高級ホテル。
美容院で髪を巻いてもらってバッチリお洒落した私は、ウキウキしながら会場のホールに入った。
「クレタさん!」
「あ、カイドくん!久しぶりだね」
「お久しぶりです~!クレタさんは相変わらずお綺麗です~!」
「ふふ、ありがとう。カイドくんもスーツ姿がキマってるね」
「いやぁ、クレタさんに褒められると照れちゃいます~」
カイドくんは22歳の新人漫画家で、本名は皆藤くん。
出版社で編集さんに紹介されて仲良くなり、今では姉のように慕ってくれている。
ちなみに「クレタさん」とは私のこと。
私のペンネームは『クレタ ミオ』といい、実は『クレタ』は樹王の姓の『呉田』からきてたりする。
──というのは…
ペンネームの発端は遡ること専門学生の頃。
男女の恋愛漫画を描くも「絵は綺麗なんだけど、何かこう…男女の気持ちとか絡みとかが上っ面っぽくて、乙女心にキュンって響かないんだわさ」と専門学校時の女友達に言われていた。
そりゃそんな恋愛経験皆無なんだからわからないよ!と愚痴ったら「どうせ同じ未経験ゾーンを書くなら、こんなのはどうよ!」と勧められて、見知らぬ世界ながら描いてみたのがBL(ボーイズラブ)。
しかしそれがその女友達にウケて「コンクールに出すべきだわさ!」と推薦されて、出してみたら賞を獲ってしまったのだった。
で、ここからが本題。
その作品を応募するためのペンネームをどうしようかと頭を悩ませていたある日、家に遊びに来てた樹王と名字の話になったんだ。
「そういや呉田って日本語っぽくなくてかっこいいよね。クレタ島の方を思い浮かべちゃうもん」
「じゃあ使うか?ペンネームに」
「え?ペンネームにって…」
「クレタ ミオ、ってカタカナだとかっこよくね?ほら」
「…ほんとだ!かっこいいし、短くて覚えやすいね!でもいいの?樹王の名字なのに」
「構わねぇし。だから頑張れよ」
「わーい、ありがと!」
…って当時は軽く決めちゃったんだけど、よくよく考えたら樹王の名字を名乗るって、ねぇ…
もう大人だし樹王も気付いてると思うんだけど、私がこのままのペンネームでいても気にならないのかな。
でも無頓着そうだもんな、樹王。そもそも気付いてないかもね。ふふ。
「あっ、ミオちゃんいたいた!カイドくんは久しぶりだね」
「岡田さん、お久しぶりです~!」
「オカちゃん、占いの本、借りっぱなしでごめんね」
「いーのいーの、どうせ見てないし」
オカちゃん(岡田さん)は私の編集担当の女性。
そして何と!彼女は専門学校時代、私にBLを勧めた、あの女友達だったりする。
オカちゃんは、卒業後は編集者として働き、数年前に私の担当さんとなったのだ。
三人で近況を話し合っている内に開式の案内が流れ、会場にいる皆が指定された場所に座ると式典が始まった。