幼馴染みの秘めた溺愛  ~お前は女神でヒーローで

「呉田!そっち頼む!」
「はい!」

火災の現場に到着して消火活動に合流する。

火元の住宅に住む一人暮らしのおばあさんは外出中で、無事が確認されたと聞いた。

ただ乾燥と強風で火の勢いが強く消火もままならない。
何としても延焼は阻止しなければ…


ふと見ると鷹取が誰かと話していて、何を思ったのか鷹取が家屋へと近付いて行った。

そっちはマズいだろ!上が見えてねぇのか!?
…ったく、あのバカ!


「島津さん!こっち頼みます!鷹取が!」
「えっおい、そっちは…!」

俺は急いで鷹取に近付く。

「バカ!戻れ!」

「いや、中に犬がいるって!」

「無理だ!」

「いやでもこっち側はまだ」

「とにかく無理だ!戻れ!」

「でも」

腕をグイと引っ張るも「行けます」とかバカな事を言う。

…その時、上の方でヤバい音がして見上げたら、屋根の一部と柱が倒れてくる所だった。

「危ねぇ!」

俺は咄嗟に鷹取を突き飛ばして、自分も逃げた。

…つもりだったが、思いのほか鷹取が退かず、俺も思っていた所まで逃げらんなくて、やべぇと思った次の瞬間、身体に激痛が走った。

!!

「き、樹王さん!!」
「呉田!大丈夫か!」

「はい…大丈夫…です」

「呉田!しっかりしろ!」
「樹王さん!」

「……!」

「………」


島津さんと鷹取の声が徐々に聞き取れなくなる…

やべぇのか…俺…

クッソ…すげぇ痛ぇ…動けねぇ…
けど、まだ…くたばる訳には…いかねぇ…


まだ…美桜に…言ってねぇんだ…

明日…美桜に…言うんだ…


愛してる、って…

結婚してくれ、って…


美桜……
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