幼馴染みの秘めた溺愛  ~お前は女神でヒーローで
面会時間終了まであと30分になると、おばちゃんは「樹王も寝てるし、明日また来るわね」と病室を出ていった。

穏やかに眠ってる樹王を見て、私も帰ろうかなと、椅子から立ち上がる。


「明日も来るからね、おやすみ」

聞こえてないとわかっているが、そう小声で話しかけて立ち上がると「美桜…」と小さな声がした。


「起こしちゃった?ごめんね」

「いや…帰るのか?」

「うん、樹王もおやすみしてたから」

「面会の…時間…まだある?」

「あと30分くらいかな」

「じゃあ…最後まで…いて」

「うん」
私はまた椅子に座り直した。

「手…いい?」

「いいよ」

それは〝手をさすって〞の事。
私にお願いしてくれるのがたまらなく嬉しい。


それにしても、樹王の身体は先生も驚くほど強靭らしい。

声は掠れてるものの、ゆっくりだけど話してるのを見た先生が「よくこれだけの大ケガで話せるね」とびっくりしてたもんね。

とは言えまだ身体を動かせないのだから、きっとすごく痛いんだろうな…

でも、その辛さを他人には見せようとしない。

…樹王は昔からそうだったね。

けど、私には見せてくれてたよね、弱い樹王を。

私はどんな樹王だって大好きで、いつだって受け入れるから…

だから…私には甘えてほしい。

そう思いながら、優しく手をさする。

この手だって、まだゆっくりとしか動かすことはできない。

早く良くなぁれ、と念じながら優しくさする。



「美桜…ごめん」

「ん、何が?」

「明日の…デート…行けねぇわ」

ごめん、なんて何かと思ったら…

「ふふ、そんなにあたしとデートしたかった?」

「ん…したかった」

なーんてね、って続けて言うつもりだったのに、その前に樹王の返事が返ってきた。

「デート…したかったんだ」

そう私をまっすぐに見て言うから…
私も素直に言ってしまった。

「あたしも楽しみにしてたよ」

恥ずかしかったけど…ほんとの気持ちだから。



「俺…明日…美桜に…言いたいことが…あったんだよ…」

「言いたいこと?」

「あぁ…それ今…言ってもいいか?」

「うん、いいよ。なぁに?」


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