遊木くんの様子がおかしい




「三島三島、これ見て」



突然ちょいちょいと手招きをする遊木くん。



…?

なんだろ。



遊木くんが指差すプリントを、私は身を乗り出して覗き込む。




すると



遊木くんは私の顎に手を添えて

ぐいっと持ち上げてみせた。




「引っ掛かった〜」




またあの可愛らしい猫の笑顔が至近距離で見えてしまう。



その瞬間、ボンッと私の顔は爆発した。




「なっ…」


「ブハッ、顔赤っ」




私は慌てて身体を遠ざけて、ケタケタ笑う遊木くんを睨んだ。



…何今の。

何今の!!!


さすがに、今のは、死ぬ!!




「三島の反応面白い」


「お、面白いって……!」




こっちはこんなにドキドキしてるっていうのに!


こんなんじゃ心臓いくつあっても足りないよ!




「ごめんごめん。じゃ、早く作業終わらせよーぜ」


「……」




そして何事もなかったように作業を再開させる遊木くん。


……なんでこんなに振り回されてるんだ私は。

なんか悔しい。


理由が分からないから、すっごくモヤモヤする。




「…遊木くん、
なんでいつも私に意地悪するの?」




私はホッチキスを手に取りながら、思い切って聞いてみた。


筆ペン事件も、ハイタッチも、さっきのも

その他諸々。


一体どういうつもりでイタズラしてるの?




「…さあ? なんでかな」




動揺する素振りはなく、淡々とホッチキスを留めながらそう言った遊木くん。

もうこれ以上は何聞いても答えてくれなさそうな雰囲気で。


……上手いこと逃げられてしまった。



結局謎は謎のままなのか…。


あぁほんと、モヤモヤする!



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