遊木くんの様子がおかしい
「新しいクラスってそわそわする」
休み時間中、私は教室内をキョロキョロ見回しながら小さく呟いた。
「まだ慣れないよね」
それに反応したのは友達の恵美。
2年生になったばかりで、見たことはあるけど絡んだことはないっていう同級生が教室内にいるのが少し落ち着かない感じ。
教卓付近では男子グループが楽しそうに盛り上がってるけど、半分以上は話したこともない。
「…男の子ってすごいなぁ」
「何が?」
「もうあんなに仲良くなってるじゃん」
私の視線の先を追って、恵美もワイワイ騒ぐ男子グループに顔を向けた。
…楽しそう。
「コミュ力高いもんあいつら」
「毎日楽しそうで羨ましい」
「宇紗子も混ざってきたら?」
「いやいや、絡みないもん」
恵美とそんな会話を交えていた折、
ふと
グループ内の一人とバッチリ目が合った。
それは私の隣の席である、遊木虎之助くんだった。
「……」
見ていたことがバレた、とギョッとして固まっていると
遊木くんは特徴的なつり目をきゅっと上げて、猫のように可愛らしい笑顔を見せてくれた。
その瞬間に私の心臓は大きく跳ねる。
……えっ、今の何?
なんてドキドキしていると、遊木くんは何事もなかったかのように男子達の会話に戻ってしまった。
「…宇紗子って遊木くんと隣の席だよね?」
「……うん」
「もうそんな仲良くなったの?」
「いや……そんなことはないはず…」
恵美も不思議そうに首を傾げている。
隣の席だけど、まだ遊木くんとは全然話せてないんだよね。
いつも男子で集まってるし。
……きっと、ただの挨拶程度に笑ってくれただけかも。
遊木くんもコミュ力高いみたいだし。