遊木くんの様子がおかしい




体育の授業は1、2組の合同で行なわれている為、もちろん組対抗で試合する流れだったんだけど……


「どうせならクラスごっちゃの方が楽しくね?」


という一人の声によって、クラスも男女も混合で試合することになった。




「遊木くんと離れちゃったねぇ」




同じチームになれた恵美が、ニヤニヤといやらしく笑いながら近寄って来る。

遊木くんはAチームで、私と恵美はBチームになった。


……悔しいけど、正直ちょっと残念だ。


まぁ同じチームだったからって、何かあるわけでもないけどさ。






「いけー!」
「あいつを倒せー!」




試合が始まると、もはやそれどころでもなくなる。


チームの為に必死にボールを避けて、なんとか生き残ろうと踏ん張るわけで。

一人、また一人と当てられて人数が減ってくると更に緊張感が増してくるのだ。



と、その時。




「あっ、やば…っ」




狙われて逃げようとした瞬間、足が絡まってよろけてしまった私。

その隙にボールが投げられてしまったのが視界の端に見えた。



……あぁ、やられた。



なんて諦めかけた時。




――バシッ




近くにいた一人の男子が私の前に立って、なんとそのボールをキャッチしてくれたのだ。


その瞬間、「おー!」と歓声が上がって。

男子は外野にボールを投げた後、くるりと私の方を振り返った。




「大丈夫?」


「……あ、うんっ。ありがとう!」




優しい笑顔に少しきゅんとする。


……確か、2組の鹿野(しかの)くんだ。


話したことなかったけど、一気に好印象になったな。



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