遊木くんの様子がおかしい



私は再び遊木くんに顔を向ける。


遊木くんはそんな私に気付くと

またニコッと爽やかに笑ってみせた。



そして何事もなかったかのように黒板へ視線を戻してしまう。



……え、冗談じゃなくてほんとにこれで書けと…?

筆ペンで??


…いや、でも使えるペンが他になかったのかもしれない。

ボールペンだって、1本しか持ってなかったら貸しちゃうと自分が使えなくなるし。


そうそう、きっとそう。


貸してもらってるんだし、文句は言っちゃダメだよね。

ありがたく使わせていただこう。




それから私は筆ペンでノートをとり、配られた小テストもなんとか筆ペンで記入したわけで。

英語を筆ペンで書くのもなかなかシュールで違和感がすごい。


ていうか死ぬほど書きづらい!




「じゃあ隣の人とテスト交換して採点始めてください」




先生の声掛けにより、私も遊木くんとテストを交換して採点を始めようとする。


と、その時。




「…ブハッ」




隣から聞こえた吹き出す声。


顔を向けると、遊木くんが両腕を机について肩を小刻みに震わせているのが目に入った。


……え、笑ってる?




「…どうしたの?」


「…っいや、…文字デカッ…って」




ヒーヒーと苦しそうに笑う遊木くんに呆然としてしまう。


いや……筆ペン貸したの遊木くんじゃん!

解答欄小さくてすごく書くの苦労したんだから!


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