遊木くんの様子がおかしい





――…



結局、ドッジボールはAチームが勝利して体育の授業は終了した。


遊木くんは運動神経が良いみたいで、最後までずっと中に残ってたな。




「久々にドッジやったけど割と楽しかったわ」


「うんうん。汗かいちゃった」




私と恵美はそんな話をしながら教室へ帰って行く。


何回か遊木くんと目が合って、ニコッと笑顔を向けられながら狙われたこともあった。

怖いよ。




「そういえば鹿野くん、かっこよかったね。宇紗子助けてて少女漫画みたいだった」


「ね! ヒーローだった!

恵美は鹿野くんと話したことある?」


「いや、無いなぁ。バレー部なのは知ってるんだけど」




やっぱりそうか。

同じクラスにならないと、男子とはなかなか話す機会無いもんね。




「あら宇紗子。もしかして鹿野くんに惚れちゃった?」




ニヤッと笑う恵美。

私はぎょっとして手を振った。




「なわけないでしょ! 私そんな惚れっぽくないって!」


「えー残念」


「さっきまで遊木くんのこと好きでしょとか言ってたくせに…」


「あら? そうだっけ?」




とぼける恵美の背中をぐいっと押して笑う私。


そこでようやく教室に着いて、私は先に教室内へ入ろうと足を踏み入れた。




「――わっ」




思わず声を漏らしてピタッと立ち止まる。


教室に入ると、目の前に見えたのは男子の背中で。

どうやらいつもの男子グループが何やら遊んでいたようだった。



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