遊木くんの様子がおかしい
「くぉら遊木! テメェいい加減にしろ!」
「俺らを無視してんじゃねぇ!」
遂にしびれを切らした男子達がワッと遊木くんに飛びかかる。
遊木くんは「あ、ごめんごめん」なんて笑いながらようやく男子達に顔を向けた。
……はぁ…ドキドキした……。
「ゲームの途中だってのに、三島さんにちょっかい掛けんなよ!」
「あー忘れてた。ゲームしてたね」
「こいつはほんとに…」
「三島さんごめんな?」
通っていいよ、と男子達が遊木くんをどかして通り道を作ってくれる。
私と恵美はその隙に教室へと入った。
……なんだったんだ、さっきの。
男子達も言ってたけど、ほんとに遊木くんは何がしたかったんだろう。
とことんマイペースな人だ…。
あー…もう、早く収まってよ私の心臓っ。
顔が熱いのを感じながら自分の席に腰を下ろすと、恵美がぽつりと呟くように口を開いた。
「遊木くんには思春期とか来てなさそう」
「…へ?」
「だって他の男子も女子も見てる前であんな真似を顔色一つ変えずにできてんじゃん」
……確かに。
恥じらいってものが彼には欠如してるとしか思えない。
なんて、向こうでティッシュに下から息を吹きかけて落とさないように遊んでる遊木くん達を眺めながら溜息をついた。